甘い時 〜囚われた心〜
階段を上がり、桜華の書斎のドアをノックする。

ウンともスンとも言わない。

中を探るように、扉を開け入った。


桜華が立派な机に座ってパソコンをいじっていた。

雛子が入ってきたのを気づいていない。

かなり、仕事に入り込んでいる。

気づかなかったが、目が悪いのか、黒縁の眼鏡をかけていた。

まったく雛子に気づく様子はなく、とりあえず、トレイを持っていく。

桜華の横に来たとき、尚人ではない人影に、足から上へと視線を滑らした。


「…雛子…」


「あっ…お夜食を…」


「尚人は?」


「お部屋で用事があるそうで…」


「そう…」


眼鏡をはずし、目をしかめると、目頭をおさえた。

「そこに置いといて」

視線で指示する。


「はい」

机の端に、カップとお皿を置いた。

しばらく考えるが、話す内容が見つからなくて、焦ってくる。

「あっ…では、失礼します!」

話す事がないから、去るしかなく、頭を下げると扉に向かって歩いていく。
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