甘い時 〜囚われた心〜
乱暴に祐希奈を図書室に連れ込んだ。

「きゃっ!」

いきなり離された手に、バランスを崩してカウンターに手をついた。

倒れなかったことをホッとしたのか、息を吐く。

「どうして、雛子に言った」

冷たい低い声が、祐希奈の鼓膜を振るわす。

「だって…遅かれ早かれ、雛子ちゃんには分かることだもん!」

「俺はお前とは結婚しない」

顔色一つ変えずにキッパリと言う。

「でも、神楽の力が欲しいなら、それしか方法はないんだよ?私…」

ユックリと桜華に近づき、制服の裾を掴み、上目遣いで語りかける。

「私…桜華様に会ったお見合いの日…一目惚れしたんだよ?…」

少し潤んだ瞳。

大抵の男なら、一発で虜になるであろう姿。

祐希奈は、背伸びをして桜華の頬を引寄せ、キスをした。

桜華は、ただジッとされるがまま。

しかし、次の瞬間。

桜華は自分の頬に触れていた両手を掴み、近くの机に押し倒した。

長机の上に押し倒され、一瞬ビックリしたような顔をしたが、すぐに笑顔になる。

祐希奈は思っていた。

(これで…私の者…)

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