甘い時 〜囚われた心〜
光を失ったような瞳の雛子を篠原に頼んで、先に屋敷へ帰すことにした。

「じゃ、頼みます」

「あぁ……」

またタバコに火を付け、煙を吐き出す。

「なぁ…」

尚人を呼び止め、静かに口を開いた。

「あのバカ桜、どうするつもりだ?」

バカ桜とは桜華の事。

桜華が小さい頃から、使えていた篠原だから言えること。

「バカって言わないで下さい。他の者に示しが着かないでしょ!」

「はいはい」

右手をヒラヒラして、車を発車させた。

運転席からは仕切りがある為、後部座席は見えないが、きっと泣いている…

それを思うと、堪らなくなった。

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