甘い時 〜囚われた心〜
屋敷につくと、何名かのメイド達が、玄関前に待機していた。

篠原が運転席から出て、後部座席の扉を開ける。

しかし、雛子の姿が出てこない。

「篠原さん…」

一番前にいたメイドが少し困ったように篠原を呼ぶ。

メイドの視線は車の中。

篠原も開けていたドアから手を離し、車の中を見た。

座席に横たわる雛子。

「雛子!」

倒れているのかと焦った篠原が、車の中に入ると、静かに寝息をたてている。

ホッとしながらも、閉じられた瞳から流れる涙を人差し指で拭ってやる。

知らず知らずの内に、舌打ちしてしまった。

雛子を抱き上げ、車を出る。

「眠っている。部屋に運ぶから」

「よろしくお願いします」

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