無垢な瞳
「さあ、こっちだよ」

僕はコウの耳元でささやいて誘導した。

コウはあらかじめシナリオで全てを把握しているので、動揺は見られない。



大丈夫、きっとうまくいく。

コウはいつも同じように僕の言葉を繰り返した。

僕とコウはパーテーションの中へ消えた。

みんなもそれぞれ定位置についたようだ。



アキが最後に登場し指揮台に上った。

ここでアキがタクトを持ち上げて‥‥とケンはカウントの準備をしていた。

ところが、アキはくるりと客席の方に振り返った。

待て、アキ!

そんなことシナリオに載ってないぞ。

やめろ、コウが動揺するじゃないか。

心臓がどくどくと波打っているのがわかった。
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