無声な私。無表情の君。
「愛ー!呼ばれてるよー!」

遠くから私を呼ぶ声。
もう、昼休みぐらい自由にさせてよ。

【だれ?】

「2年生の…あれ?誰だっけ?忘れた」

【ずこっ!まあ、ありがとね。みほ】

美穂は学校で言うお馬鹿キャラ。
そしてキャラじゃないのが痛いところ。
可愛いんだけどね。

「うん!あ、男の子だから」

美穂に笑顔を見せる。
営業スマイルってやつ?
ここ一週間はそれしかしてない。

廊下に出ると本当に男子生徒がいた。

「愛先輩、放課後一緒に帰りませんか」

切れ長の目に、くっきり二重まぶた。
涙ボクロと、少しの癖っ毛。
しまいには高身長にスリムボディ。
完璧な美少年だった。

【だれ?】

美穂に見せた同じページを見せる。
2年って事は私の方が年上だからタメでも大丈夫よね。

「あ、すいません。
俺、2年の東雲 麗弥(しののめ れいや)って言います。
ペンとメモ、貸してください」

?何がしたいのか分からない。
言われた通りにペンとメモ帳を渡す。

【東雲 麗弥】

「はい。ありがとうございましたっ!
漢字でこう書きます。難しいでしょ?」

綺麗な顔には笑顔も良く似合う。
礼儀正しいし。モテそうだな〜。
東雲君ね。珍しい名前。

【私、部活してるの。放課後はちょっと……】

そんなのは良い口実で本当は康介以外の男子と帰るのが嫌だっただけ。

「なら、放課後まで待ちます」

え。

【そんな、悪いって】

「図書委員なんで図書室で宿題でもしときますから大丈夫ですよ」

なら、いいのかな。
てか、そんなに私と帰りたいの?
何でよ…。
こんな時に限って…。

誰かと一緒に帰るなんて一週間ぶり。
けど、私にとっては長い長い一週間だった。
独りがこんなにも寂しいなんて、康介が居なくなって初めて気づかされた。
少しぐらい、誰かと帰っても……

「……ぱい?…愛先輩?」

ハッと我に返る。
急いでペンを走らせる。

【じゃあ、放課後、校門の前で】

「はい!ありがとうございます」

ルンルンと帰っていく東雲君。
あ、あれ?私、約束しちゃった…?

《少しぐらい、誰かと帰っても……》

その程度だった。
ほんの少しの気持ちだった。
そのせいで、康介以外の人と……。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
ごめんなさい。

胸が締め付けられる。
なんでだろう。
もう、付き合ってないのにね。
性懲りもなく、もう一度縒りを戻したいって自分がいるんだ。
出てきて欲しい涙は出てこない。
そのせいで余計胸が痛い。

今日だけ…。
今日だけは許して。
ごめんなさい。康介。

思っても意味はないのにね。
ごめんなさいって書いても、きっと見向きもしないだろう。
だって私の事嫌いなんだからね。
本当は部活で見たくもないのに、こんな私に居場所をくれてる。
ありがとう。そしてごめんなさい。

今日だけは…
今日だけは、貴方を裏切ります。

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