無声な私。無表情の君。
用件を済ませて、職員室を出て、今日の時間割を思い出しながら廊下を歩いていると_____


ドサッ


鍛えられていない私の身体は何かにぶつかり、その場で倒れこんだ。
ダイレクトに腰痛い。痛すぎるぞ。おい。


そして、私は胸ポケットからメモ帳を取り出した。
これは、会話ができない私の、私による、私のための筆談ノートだ。
と、言っても私自身あまり、会話をする友達がいないので活躍する事自体はあまりないのだが。


3ページ目の《すみません》の文字をぶつかった人に見せる。
どうやら男子生徒にぶつかったようだ。
と、言うか、この人表情筋あんの?ってぐらい無表情なんだが。
真っ黒でストレートの髪。それに伴って黒い瞳。何より背が高い。
そんな感じの人ですね。


メモを読むなり男も手のひらを合わせてお辞儀してきた。
声が聞こえないわけじゃ無いんだが、まぁ、いいや。


スッ


手を差し伸べてきた。《掴まれ》 と。


スッ


手を差し伸べ返した途端、過去が甦る。


~触れたくない~


前に人に触れたのはいつ?今まで人と触れていいことあった?_____ない。

~触れちゃだめだ~


身体中の熱が一気に上がった。
多分、今、顔真っ赤。


パサッ


自らの力で立ち上がり、走って逃げた。


「.........」

まさか、この出来事が私の……いや、私たちの未来を変える出来事だったとは思いもしなかった________
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