冷血上司の恋愛論
「え?ちょっと、…ちょっと待って下さい。え?」


ドアのパタンと閉まる音が聞こえた。


「待ってられないのですよ。こたえてもらえませんか?」


場所を移動したらしい田所は、次には、ハッキリとした口調に変わった。


「泣いた?万利乃が?」


「あぁ」


「あり得ない。アイツ、別れてくれって言った時も泣かなかったのに?」


「当たり前だろ。藤井みたいにプライドが高い女が、そんなことで彼氏の前で泣けるかよ!」


「……万利乃のこと、好きなんですね」


突如、声を荒くした俺と対照的に、先程とうって変わって落ち着いた田所。


形勢逆転してしまった。


「あぁ。初めて会ったときからな」


「そうですか。長い付き合いの中で、アイツ、俺の前では、一度も泣いたことがありません。貴方の前で泣いたのなら、俺の負けです。きっと、貴方のこと好きになりますよ」


「それは、貴方だけには言われたくない」
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