冷血上司の恋愛論
「あの、課長!」


駅に向かって歩いていたところ、後ろから藤井が呼び止めた。


「どうした?気分でも悪いか?」


俺が聞き返すと、首を横に振る。一歩藤井に近付けば、酔って潤んだ目で俺を見上げていた。


「雅司さんから電話って嘘ですよね?」


「何でそう思う?」


「だって、雅司さん、電話を切る前に、『迎えに行ってやるから、良い子でいろ』って子供扱いしてたんだもん。酷くない?一人でいつも帰れるって言っているのに」


「…………」


「だから、私、まだ帰りたくないの!子供じゃないことみせたいの!」


ハァと零れた溜め息。


俺のスーツに手をかけて上目使いでするお願いが計算されたものでないことは藤井の目を見ればわかる。


だから余計にたちが悪い。


甘えた顔ってコレ!?心臓に悪すぎる。


専務が心配するのも無理ないだろう、コレでは。いや、専務の本命かもしれない。


先程の藤井の話を聞く限りでは、本命のが正解か?
< 44 / 49 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop