冷血上司の恋愛論
「そう……アナタの優しさに気付かないなんて残念な人しか周りに居ないのね」


憐れみ、同情。


そんな目で見ているのかと思ったのに、女の目は輝いていた。


「あッ、アナタのその仏頂面のせいね」


まるで子供が手品の種に気づいたかのように。


「このまま此処でお話ししてアナタを変質者にしてあげてもいいけど」


フフフと笑う女に、

「冗談じゃない!行くぞ!」

と女の手を引き俺の部屋に向かう。


会社の奴の親戚だということで、毎年親睦会という名の部門旅行の為にほぼ貸切状態の老舗旅館。売りは、片方の大浴場から見える滝。人気の大浴場とあって男湯と女湯の入替えがある。


重役クラスを省き各部署の部長以下が集い、持ち回りで離れと露天風呂付きの部屋があてがわれる部長クラスの連中。


その一角に課長の俺が女を連れ込んだなんて、バレたらどんな冷やかしを受けるのかと足早に俺の部屋に女を引き摺りこんだ。


趣のある入り口の生け花に目もくれず一目散にガラスの向こう側に行った女。




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