ぼくたちはあいをしらない
「たーつーおー、みーつーけーたーぞー!
 とりゃ!!」

 その声とともにポニーテールの女の子が現れる。
 そしてその女の子は、竹刀を振り下ろした。

「みゆき……
 ちょっと待て、今大事な話を……」


 達雄がそう言うと、みゆきと呼ばれる女の子がニッコリと笑う。

「今日は、私のサンドバッグになる約束をしてたでしょ?
 忘れたの?」

 突然現れた女の子の言葉に茂は、少し驚く。

「待て……
 そんな約束はしていないぞ?
 お前が一方的に……」

 達雄がそう言うと女の子は、後ろにいたロングヘアーの女の子に尋ねる。

「静香。
 静香は覚えているわよね?」

 竹刀を持った女の子に尋ねられた女の子は、小さくうなずく。

「うん。
 覚えているよ。
 みゆきちゃんのいうことを何でも聞くって約束してた」

「ああ、約束はした。
 だが、サンドバッグは、ルール違反じゃないか?」

 達雄の問いに竹刀少女の表情が黒くなる。

「なに?私の言うことが聞けないの?」

「聞かない」

 達雄は、即答する。

「ところで、その後ろにいる子は誰?」

 ロングヘアーの女の子が、茂の方を見た。
 正直、茂は今の状況についていけてなかった。

「えっと、僕の名前は来島 茂」

 とりあえず茂は、自己紹介をしてみた。
 すると百寿が、ため息混じりに言葉を付け足した。

「これから、お前たちの兄妹になるヤツだ。
 お前らと同じ歳だ。ケンカはするなよ?
 みんな仲良くだ。仲良くしないヤツは飯抜きだ」

 百寿の言葉に竹刀を持った少女は、残念そうに答える。

「フルボッコしちゃダメ?」

「ダメだ」

 百寿は、ため息まじりに言った。
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