ぼくたちはあいをしらない
「私、やってもいい……」

 美楽が、ぼそりと言葉を放つ。

「ん?」

 百寿が首を傾げる。

「私、ゆかりさんの赤ちゃん治す」

「怪我と違って病気は、お前の身に何が起きるかわからないんだぞ?」

「大丈夫。
 生きている限り治せる」

 美楽は、そう言って分娩室に入った。

「強引だな……」

 百寿が、小さく笑った。


―― 分娩室

「……ゆかりさん」

「美楽ちゃん、どうしたの?」

 ゆかりの目は、涙で溢れていた。

「私。
 赤ちゃん、治せるかもしれない……」

「治す?」

 ゆかりが、首を傾げる。

「うん。
 でも、私ひとりの力じゃ無理。
 目の病気は、桜の力があれば治せる」

「何の話をしているの?」

「私、病気や怪我を治すギフトを持っているの」

「そう……
 でも、この時期、桜なんて……」

「大丈夫。
 この病院に桜道があるよ」

「……咲いてないよ?」

 ゆかりがそう言うと美楽が笑う。

「咲かぬなら 咲かしてしまえ 桜はね」

 美楽が、そう言って分娩室のドアを開ける。
 するとそこには心配そうにゆかりを見る茂たちの姿があった。

「みんな……」

 ゆかりが、目に涙を浮かべる。

「さぁ、桜の場所へ……」

 美楽が、そう言うとみんなは桜の場所に向かった。
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