ぼくたちはあいをしらない
「ちょっと難しい。
 小学1年生への問題じゃない気がする」

 美楽がボソリと呟くと百寿は、ニヤリと笑う。

「これは、忠雄、美楽。
 お前たちへの宿題でもあるんだぞ?
 道徳の時間のな……」

「命の大事さならわかっているつもりだが……」

 忠雄が、そういうと百寿が答える。

「命の大事さだけが、道徳じゃないさ……
 俺が教えれるのはここまでだ。
 あとは自分で考えるんだな」

 百寿は、そう言って缶コーヒーを口に含んだ。

「先輩、その宿題の答え……。
 私にもわかりません……」

 南が、言葉をもらす。
 すると百寿がため息まじりに言葉を放つ。

「そりゃそうだ。
 この答えは俺にもわからない」

「えー。
 ダメじゃないですか。
 答えはちゃんと用意しておいてくれないと……」

 南もまた、ため息混じりにそう言葉を放った。

「全く、お前まで何を言っているんだ?
 物事全ての『なぜ?』に答えがあるとは限らない。
 社会に出れば多くの『なぜ』にぶつかる。
 その多くの問題に正しい答えなんてない。
 自分で考え自分なりの答えを見つけるんだ」

「……じゃ、こういうのはどうかな?」

 茂が、何かを思いついたかのように言葉を放つ。

「うん?
 早な、茂。
 どんな答えを見つけた?」

「美楽お姉さんが、赤ちゃんの病気を治す!」

「え?」

 南が、目を丸くさせる。

「それがお前の選択肢か?」

 百寿が、茂に尋ねる。

「……うん。
 ダメかな?」

「ダメじゃない……
 だが、美楽の能力も無限じゃない。
 重い病気を癒すとなると美楽の体に負担がかかる。
 それでも、お前は美楽に赤ん坊の病気を治せと言えるか?」

「それは……」

 茂が、口ごもる。

「さぁ、道徳の時間のはじまりだ」

 百寿の言葉が茂たちに重くのしかかった。
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