嘘恋
「よーし。おわったぁ〜」
どかっとソファーに腰を下ろした成瀬。
「ほら、来いよ」
「っ…」
そっと近づくとひょいっとあたしを自分の膝の上に座らせた。
なんだか恥ずかしくてあたしのお腹にある彼の手を握った。
「あっ、そうだ。俺もプレゼントあるんだなー」
「え!?ほんと?」
首だけで振り返ると成瀬くんと目が合ってそのままふたり唇を重ねた。
「っ…ん」
「…んな声だすなって。俺だって抑えてるんだから」
するとあたしを膝から降ろし、なにやら小さな箱を持ってきた。
「これでーす」
「開けていい?」
「おうっ」
包装紙をとると、なにやら小さな箱がでてきた。
これって…
パカッと中を開けると、やっぱり思っていたものが入っていた。
「指輪だぁ…」
シルバーのリングにほんのりピンクの小さな石がのっかった大人っぽいデザイン。
「おう。指輪だけはさ、自分の金で買いたくて、バイトしてた時の金で買ったから安もんだけど。俺の気持ち!」
貸してっといわれ指輪を渡すとあたしの手を握った。
「俺は左の手だから、お前は右ね」
そう言って、私の指に指輪をはめる。
「香奈。生まれてきてくれてありがと。俺に出会ってくれて、ありがと」
その成瀬の瞳がいたいほど真剣で
なんでかな
涙がでてくる。
「ばかっ…」
「ホント泣きむしだなぁ。お前には俺がいないとな」
その時見えた成瀬の左の指に輝くあたしと同じ指輪。
なんだかすごく嬉しくて。
あたしと成瀬は
赤い糸よりも、もっと強い愛で繋がってる気がした。
「約束するよ。俺、お前と結婚する!」
「…結婚?」
涙をぬぐって顔を上げるといつもみたいな成瀬の笑顔があった。
「俺たち、もうすぐ卒業するじゃん?だから結婚できるってわけ」
あたしと…成瀬が結婚?
こんなのって…。
「ほんとにいいの…?あたしで」
「ばーか。お前だからいんだよ」
「成瀬…」
あたしはあなたを2年間想ってた。
だからね、今彼がここにいること
こうして抱きしめ合えること
指輪をくれて、結婚するなんて言ってくれたこと
その一つ一つが夢みたいで
まだ実感ないんだ。
でもね、あなたがここにいることが
それは確かなことだから。
「うん…っあたし、結婚する!成瀬と」
「おう!約束な!」
そう言って誓うようにキスをした。