私と執事
お嬢様、図書。←

ファンタジー

「今日はファンタジーにしようかな」
図書整理する私の隣で、お嬢様───彼女は本を1冊手にとる。
「随分と、マニアックなものを」
余り知られていない作家の本で、それも随分昔のものだ。
よく見付けたと素直に感心する。
「貴方は読んだことある?」
「ええ。貴女に仕える前の話です」

まだ執事見習いだったころの話。
すぐに散らかる図書の整理の途中に見掛けた。
何となく手にとって読んでいたら、
「それおもしろい?」
と、転んだら泣き出すほど幼かった彼女が私に聞いた。
「ええ」「わたしもよみたい!」
この本を理解するには些か早いから、
「文字を沢山読めるようになったら、一緒に読みましょう」
それでも納得しない様子で赤い頬を膨らませたから、冒頭を少しだけ読み聞かせた。
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