私と執事


疲れたのか、薬の所為か、咳に代わって規則正しい息遣いが聞こえる。
なのに時々聞こえる、喉の奥から聞こえる木枯らしのような音。
弱った彼を見るのは幾度かあって、ここまで酷いのは初めてで。
雪遊びに付き合わせたから、なんだ。
額に置いたタオルを濡らして。
私は夜明けを待つ。
冷える部屋、突き刺さるように冷たい水。
(昔、たくさん看病してもらったな)
病弱だった私。
すぐ風邪引いて、彼は一晩寝ずに看病しててくれた。
看病疲れを見せないですぐ仕事に走って。
彼は強いんだな、って見ていた。

───それが全て仕事でも。



夜が明けて、熱は下がったけど、彼はまだ空咳をしている。
「………お嬢様」
「何」
「風邪うつりますよ。うつったかも知れないですが」
笑って、そんな冗談言って。
「来ます?寒いでしょう、そこは」
「別に、」
「嘘つき、指先真っ赤」
………バレバレですよ、全く。
布団を一角はいで、私の腕を引いて。
熱が籠る布団の中、私は彼の腕に絡められて動けない。
………これは、これで幸せだから、いいか。
私は彼の背中へ手を伸ばした。
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