シローせんぱいのこと。
「調子には、のってないです……シローせんぱいが優しいのも、知ってます。けど、スキだから、引き下がるなんていやです」
スキだから、あの日だけで終わらせなかったの。
スキだから、自分から勇気を出して近づいたの。
なのに、今更そんなこと従えない。
「ムカつくんだよっ……」
ひとりがわたしを叩こうと手を振り上げる。
叩かれるっ……そう覚悟を決め、びくっと目を瞑ってこらえた。その時
「ムカつくのはあんたらだっつーの」
聞こえたのは、凛と通るあの声。
「え……?」
驚き見るとそこに立っていたのは、紺色のセーターに長い髪をおろし腕を組んでいるアヤさん。
細長い足で堂々と立つ彼女に、全員の視線は向く。