シローせんぱいのこと。



「ったく、バカな奴らめ!大丈夫?なにもされてない?」

「あ……はい、ありがとうございました」

「どういたしまして。って、あ!膝!赤くなってるじゃん!転ばされた!?」



先ほどまでの強気なオーラはどこへいったのか、笑ったりオロオロしたりとコロコロと表情を変えるアヤさんはいつもの遠目で見る印象より可愛らしい。



『可愛いところ』



……そっか。シローせんぱいも、こういうところに惹かれたんだ。なんか分かるなぁ。

分かるけど、胸がズキと痛む。



「ちゃんと保健室行きなね?あいつらには私からまた言っておくし……くそっ、そもそもシローのくせにモテるからこうなるんだよね!」

「シローのくせに、ですか……」

「男はあんなボンヤリしたモヤシ体型よりシャキッとしてムキムキ体型のほうがかっこいいのに……なんでみんなシローなのかねぇ」



『シローのくせに』、シローせんぱいをそう言う人初めて見た。

けどきっとその一言は、仲がいいからこそ言えること。そう思うと、ほらまた、胸が痛む。


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