「お前は俺のモノ」【完結】
「現代人が携帯忘れたってまじかよ。
とりあえず、俺の番号教えておくか」


そう言って、葵兄はペンと財布から要らないレシートを出して裏に自分の番号を書いて行く。
レシートを受け取ると、私はそれをポケットに突っ込んだ。


「んじゃ、俺行くけど。…何かあったら一人で悩んでんなよ。
すぐに俺を頼れ」


真っ直ぐにそう言われて、私は一度頷く。
それにホッとした顔を葵兄は見せた。


葵兄と別れてから、一人になると途端に彼を思い出す。
街灯が照らすだけの薄暗い帰路を歩く。


たった一人の部屋に戻るのは少し辛い。
だけど、私にはここしかない。
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