コドモ以上、オトナ未満。
別れて“くれる”――?
そんな表現、おかしくない? まるで、ずっと前から別れて欲しいと思ってたみたいだ。
「カナコ……もしかして、まだ真咲のこと……?」
「……二人が、仲良いときは、平気だったの。このまま上手くいってほしいなって、心から思ってたし。でも、いざ二人の仲がちょっと悪くなってるの目の当たりにしたら、魔が差した……っていうか」
うつむきがちに、後悔の滲んだ声でそう話したカナコ。
そうだったんだ……少しショックだけど、カナコは嘘を言ったわけじゃないし、それを言うならあたしだって……
「もともとは、あたしが悪いんだよ。カナコが真咲のこと好きなの知ってたのに、自分も同じ人を好きになった……それがよくなかったんだよ」
「ココちゃん……」
「あたしがカナコの立場なら、もっとひどいことしちゃうかもだし。それくらい、全然気にしないでいいよ」
カナコは優しすぎるんだよ。
そんな思いをこめてカナコの肩をぽんと叩くと、彼女は急に思い立ったように言った。
「……ココちゃん! ちょっと待っててもらっていい?」
「え?」
「美術室から、持ってきたいものがあるから!」
そう言うなり、勢いよく教室を出て行ってしまったカナコ。
美術室……? 持ってきたいもの……?
頭の中に疑問符をたくさん浮かべつつ、あたしはまた壁画の方へ向き直り、その絵をぼんやりと眺めた。
カナコに初めて原案の絵を見せてもらったとき、“真咲っぽい”と感じた影は、今も健在。
でも……なんか、最初と違う部分があるような。