アイドルなんて、なりたくない<font color=
優衣の心を見透かしたような静の言葉に、優衣は驚きを隠せなかった。

「いえ、私は…」

「でも、目立つ事は好きではない。少し興味があるだけ。だけど、そのようないい加減な心では、怜がやってきた事を汚す事にならないか」

的を射ぬくような静の言葉に、優衣はガックリと肩を落として

「何でもお見通しなのですね」

観念したように言う。

静は、フフ…と笑い

「私を誰だと思っているのですか?少なくとも、あなたより伊達に齢を重ねてはいませんよ」

得意げに言う。

「そう…ですね」

優衣は苦笑いを浮かべてから

「お祖母ちゃんには、分かっているとは思いますが、正直言って二度の子役体験は、とても面白かった」

俯きながら言い、間を置いてから

「いつもと違う自分を演じるって、こんなに楽しいのか、なんて」

そう続けたが、瞳は淋しそうだった。

「そうでしたか」

静が、そう言うと

「決して芸能活動がしたいという訳じゃない。ただ、楽しかっただけなんです。…何だか矛盾している」

沈んでいる優衣の肩に静は手を乗せて

「人とは、心の中で多くの矛盾を抱えているのです。だから、おおいに迷いなさい」
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