アイドルなんて、なりたくない<font color=
それは、今まで見た事の無い曾祖父の顔だった。

相手を射ぬくような厳しい眼差し。

見た者すべてを飲み込む威厳。

それは、いつも見る優しい顔をして微笑んでいる《大お祖父様》ではない。

ビジネス界を生き抜いてきた《秋山財閥の帝王》だった。

優衣は、生唾を飲み込んでから

「無論です。自分がやると言ったのだから、完璧に《秋山レイナ》を演じきってみせます」

お腹の底から必死に出した声に

「よろしい」

いつもと同じように優しい顔で微笑んでから、優衣の頭を撫でて

「さすがは我が曾孫だ」

そう言う。

「はい、大お祖父様」

優衣は、ほっとしながら返事をする。

慎吾は、満足そうに頷き

「では、今日は家に帰るといい。早く怜に学ばなければならないだろう」

と言い

「土産も持っていくとよいだろう。用意させてあるから持っていきなさい」

【パンッ!パンッ!】

手を叩いて鳴らすと、黒服を着た男性数人が、荷物を持ってくる。

「こ、こんなにですか?」

優衣は、顔を引きつらせながら言う。

それは、優衣が一人で持って帰るのが可能とは思えない程多い。

慎吾は、上品かつ豪快に笑ってから
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