愛していると言わないで。
聞こえた声に、寝たふりを続けているとほっぺたをつつかれる。
「おい、起きろ。おい。」
ぺちぺち、と痛くはないがぶっちゃけウザい強さで叩かれる。
「んん~」
寝たふりをしながら手を払う。これで諦め……
「ちょっと!やめてください!?」
信じられない。この男……この男……
「起きたぞ。」
「起きたね~」
「最初から……起きてた……」
くすぐりやがった。ためらいもなく、乙女の腹を。
「なにするんですか。やめてください。」
少し調子を取り戻し、冷静な口調で告げる。
すると、目の前にいる男は何が悪いのか分からない、分かろうともしない顔で、後ろを向いた。
「優斗、こいつか?」
こいつ?私のこと?そして優斗?あーうん。覚えてたよ。あの人ね。OKOK。
「やっほー、莉桜ちゃん。」
なぜ私の名前を知っている?
思い出したよ。さっき散々ちょっかい出してきた人ですね。確か櫻妥優斗先輩。
「……ああ、邪魔でしたか。ごめんなさい、失礼します。」
きっとここが彼らのテリトリーだったんだ。
知らなかったとはいえ悪いことしたな。
そう思い、立ち去ろうとするとさっきくすぐってきた男に腕を捕まれる。
「なんですか。」
やめてほしい。動けない。
そんな私に向かって、男は一言。
「俺は、お前に会いに来たんだ。」