駆け抜けた少女-番外編-



洗濯物を干し終えた矢央は、視界を邪魔する洗濯物に溜め息を零しながら、雪の積もる庭を眺める。


大きな木からドサッと雪の重みに耐えかねて、大量の雪が地面に落下。


「……そう言えば、もうすぐクリスマスだよね?」


この時代にやってきて、矢央がいた時代の洋風な行事なんて耳にしなくなったとはえ、この時期がくるとやはり思い出す、家族や友達と過ごした楽しいクリスマスパーティーを。


「えっと、クリスマスツリーにケーキにチキンにプレゼント」


そのどれも、此処にいては手に入るものじゃない。


はあと溜め息を零し、今年はお預けかと嘆く。



「その、くりすます?とか、けえきとかってなんですか?」

「沖田さん?聞いてたんですか?」

「はい。立ち聞きするのもあれなんで、お隣良いですか?」


どうぞと床を叩くと、ニコッと笑って沖田が隣に腰を下ろした。


そして用意宜しく「冷えるでしょ」と言って、余分に持ってきたと言う羽織を矢央と自分の足にかけた。


んー、密着度が増して少し恥ずかしい。



「クリスマスって言うのは、キリストさんのお誕生日を祝う会?みたいなもんですかね?」


深く何の日かなんて考えたことがない。


「きりすとさん?矢央さんのご家族ですか?」

「いいえ」

「うーん、では他人の誕生日を祝うのですか?」

「そうなりますね。でも、私達は誕生日祝いをしているというより、そのムードを楽しんでパーティー……お祝いして沢山のご馳走をみんなで食べながら遊んだりして、それでプレゼント……贈り物をするってだけなんですけど。 あと、クリスマスと言えばサンタクロースですかね!!」

「さんたくろぉす?ですか。うーん、ちょっとわからないこともありますけど、なんとなくわかりました!
つまり、みんなでいっぱいご馳走を食べて贈り物をすれば良いんですよね!!」



かなり省略されてようだが、まあいいか。


「ねえ矢央さん、そのくりすます、ここでやりましょう」

「え?」





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