冷徹執事様はCEO!?
「おいおいおい、家でやってくれよ」

不意に声を掛けられた。

振り向くと駐車場の管理人らしきおじさんが眉根を寄せて迷惑そうな顔をしている。

「す、すいません」

涙でぐしゃぐしゃの顔で謝る。

こんなに傷付いている女を邪魔者扱いするなんて、このおっさんは血も涙もないわ。

「お兄さんもさー色男だけど、こんなに女性を泣かせちゃ駄目だろ」

「いや、私は寧ろ…」

「まったくー草食系だかなんだか知らんが、恥を知れ、恥をー」

田中は反論し掛けたが、おっさんは無視してスタスタいってしまった。

私は思わずクスリと笑う。

「ようやく泣き止んだ」

田中は安心したようにニコリと微笑む。

私を見つめる眼差しがあまりに優しいので、ドキドキする。

「顔を上げてください」

田中は顎に指を添えて、上を向かせると前に屈んだので、反射的に目を瞑った。

そのまま涙でグシャグシャの顔を折り目のついたハンカチでそっと拭ってくれた

ああ、何だ…涙を拭いてくれるだけだったんだ。

しかし、優しい手つきが心地よかったので再び私は目を瞑って大人しくしている。

その時、ふと柔らかい感触が唇に触れた。
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