冷徹執事様はCEO!?
「あの家が気に入っているのです」

「都心からも遠いし、広いだけじゃない」

「豪邸に住んでみたかったんです。自分で建てれば建設費用だけでも相当なものですし、何より維持費がかかります。独り身なのであそこまでは思い切れませんよ。それに都心までは一時間足らずで出られます」

実家の素晴らしさを他人から力説されている。

「そう、気に入ってもらって父も何よりだと思うわ」

私はニコリと笑って誤魔化した。

「それに気に入っているのは家だけじゃありません」

此方の様子を伺う流し目が何とも色っぽい。

「田中はお庭の手入れも良くしてくれてるものねー。あ!洗車も」

何だか甘い雰囲気に持って行こうとしてる感じがするので、天然…のふりで無邪気に交わした。

「…燁子の思考回路はプログラムより解明が難しいんだな」

田中は呆れ顔だ。

「何よ、相変わらず失礼ね。しかも敬語じゃないから余計失礼に聞こえるわ」

「燁子様は嫌だと言われましたので」田中は片眉をあげて言う。
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