冷徹執事様はCEO!?
「もう田中の素性は知れたのだから今更使用人の真似事なんてしなくてもいいのよ？」

私はニコリと笑みを浮かべながらジャブを打つ。

「私が何者であろうと、契約を結んでいる限りは、旦那さまとは雇用関係にありますので」

「あら、そう。じゃあ、私に取り入るのも雇用契約のうちかしら？」

チラリと田中に冷ややかな視線を向ける。

「まさか、それはあり得ません」田中は極めて冷静に言う。

「契約を交わした当時、まさか！燁子さまが出戻って来るとは、さすがの旦那さまも予想だにしていなかったでしょう」

「まさか」をしっかり強調してるとこがイラっとする。

「パパは… 事業のために私と田中を結婚させようとしているの？」

私は気になっていたことをズバリ尋ねた。

パパにとって私は所詮、葛城商事の事業を拡大する駒に過ぎないのだろうか。

そう思うとやるせなくなる。

「それは大きな誤解です。燁子さま」

「何が違うのよ！」思わず声を荒げた。

「旦那さまは資本提携を逆手に取って、私に出戻った娘を押し付けようとしているだけなんです」

「… え？」

想定外の答えが返ってきたので、私の頭にクエスチョンマークが浮かぶ。
< 156 / 277 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop