冷徹執事様はCEO!?
「俺の!彼女だよー。なあ、稜」

藤原は顔色一つ変えずにサラリと嘘をついた。

「じゃあ、普通事務所も否定しない?」

「本命を隠すカモフラージュとか」

「藤原さん、苦しい言い訳ね」

「あ、やっぱり?」テヘっと藤原は笑う。

「リナとはやましい事なんてない。身体だけの関係なんだ」田中はキッパリ言い放つ。

「充分やましいだろ!」私はすかさず突っ込んだ。

全くフォローになってない。

「燁子、聞いてくれ」

田中が私の手首を強引に掴み向き直させる。

力づくで抑え込められるのは、もうウンザリだ。

私は田中の懐に飛び込み、膝で腹を蹴り上げた。

見事、鳩尾にクリーンヒット。

子どもの頃に習った護身術がまさかこんなシュチュエーションで役に立つとは思わなかった。

田中は「っう…」と呻いて地面に片膝を付いた。

その様子を見て藤原は吹き出した。

「膝…蹴りって、しかも稜が…!」

口元を抑える肩を震わせている。

私はフンと鼻をならし、うずくまった田中を見下した。

「最低。もう二度と私の目の前に現れ ないで」

私は捨て台詞を吐くと、通りがかった流しのタクシーへするりと乗り込んだ。

「春日プレジデンスタワーまで行ってください」

行き先を告げると、ゆっくりと目を瞑った。
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