冷徹執事様はCEO!?
私は田中と残され、二人の間に気まずい沈黙が流れる。

「相当イカってるな」田中がボソリと呟いた。

「怒ってるわよ。当然でしょ」私は眉を吊りあげて言う。

「燁子じゃない。匠だよ」

「へ?」私は眉根を寄せて聞き返す。

「今後一切妹には近づくな、って事だろ」自業自得だけどな、と言って田中は苦笑いを浮かべる。

「そういえば、私ね、思い出したよ。田中の事」

「ようやく?」田中は片眉を上げて言う。

「勝負軒でおごってくれたお兄さんでしょ」

「あそこの餃子は絶品だった」

目が合うと私達はクスクスと笑い合う。

「餃子とラーメンを大口でバクバク食べてた燁子は可愛らしかった」田中は抑揚なく言う。

「馬鹿にしてるわよね、完全に」

「いや、元気よく健康的で本当に可愛いと思ったよ。10年以上経っても全然変わってなくて驚いた」

田中はその当時を想い出したのか目元を綻ばせた。

私が思わず頬を赤く染めると、田中は「大口で食べるところが」と付け足す。

どうやら『可愛い』のところではないらしい。
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