冷徹執事様はCEO!?
綿素材の紺色のワンピースを着て、髪は乾かし適当に纏めた。

顔面は素っぴんだけど今更田中さんに見られて恥ずかしがることもない。

眉毛だけ書き足しなんとか体裁を何とか取り繕う。

赤いカーペットが敷かれた階段を降りていき、一階にあるダイニングへ向かう。

相変わらず広いな…

私が暮らしていた2LDKの部屋がすっぽり入ってしまいそうだ。

中央には欅を使ったダークブラウンの広々としたダイニングテーブルが置かれ、同じ素材で出来た椅子が並べられている。

天井からはシャンデリアがぶら下がり、大きな窓からは庭の緑が見渡せる。

普通の生活に染まりきった私は、ちょっと落ち着かない気分になってしまう。

テーブルの上に目をやると小さなお重に入った懐石風の料理が並べられていた。

「まあ、綺麗」私は思わず目元を綻ばせる。

椅子に座り早速いただく事にした。

「庭で収穫した野菜で作りました」

田中がお吸い物の入った漆器を運んでくる。

「コレは貴方が?」

「ハイ。今料理人は雇っておりませんので」

「凄い。お店みたいね」

いただきます、と言ってさっそく緑色の豆腐に金色の餡がかかっているお料理を摘まむ。

「んー!美味しい」

「枝豆豆腐です」

其の後食べた海老しんじょうも、小松菜のお浸しも、つみれ汁も全て繊細な味付けでとっても美味しかった。
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