冷徹執事様はCEO!?
「どいてくれないか?」

「ああ、ごめんね」ベッドの真ん中を陣取っていたので左の方へ移動する。

「おやすみ」私は横たわると再びモソモソと布団の中に潜り込んだ。

「おい!」

「もう何よー」私は布団の中から迷惑そうに眉を顰めながら顔を出した。

「燁子はソファーで寝るんだろ?」

「いい歳して女性をソファーで寝かせるなんて野暮なこと言わないでよ」

「相変わらず口の減らない女だな!」田中は苛立だしげに布団を剥がす。

「ちょっと!寒いじゃない!なにすんのよ!」

ああ…甘いムード0(ゼロ)。いい歳した男女がベッドルームにいるというのに。

私と田中は相性が悪いんだなあ、と改めて思い知らされる。

やっぱり、再会なんてするべきじゃなかったのかもしれない。

「もういい…そんなに私が邪魔なら家に電話して迎えに来てもらう」

これ以上ケンカするくらいなら、家に帰って感情のない人形のようにニコニコ笑っている方がマシだ。

「本当に甘ったれだな」田中は軽蔑したように鼻で笑う。

「気に入らないと直ぐ逃げる。自分で状況を改善しようとする発想が、そもそもないんだよ」

田中の言葉が矢のように心に突き刺さる。

「じゃあ、どうすれば田中は前みたいに優しくしてくれるのよ。お給金を払ったら優しくしてくれる?」

私はまたグズグズと泣いてしまう。これでは甘ったれと言われても仕方ない。

「ぜ、全然連絡も寄越さないし、突然現れたと思ったら意地悪ばっかりして、訳が解らない」

私は涙を手の甲で拭いながら言う。

「もう燁子の涙には騙されない。たくさんだ」

田中から返って来た台詞は更に追い打ちを掛けて私を傷つけた。
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