冷徹執事様はCEO!?
食事の後片付けが終わり、リビングに戻ると田中がノートパソコンを開き画面を睨みながら、キーボードを叩いている。

隙さえあればすぐ仕事だ。

「お正月くらいゆっくりすればいいじゃん」

私は田中の肩に寄り掛かりリモコンでテレビを着ける。

「本当は年末までに終わらせる仕事だったんだ」田中は画面から目を離さずに言う。

「おかげで実家にも顔を出せそうもない」

「田中の実家ってどこ?」

「横浜」

「近くじゃない」田中は私の突っ込みをスルーした。

そこで会話は終了。

私はボンヤリとテレビのお正月特集を眺める。

隣からはカタカタというキーボードを打つ規則的な音が聞こえてくる。

何ヶ月も離れていたのに、昨日再会したばかりとは思えないほどリラックスした雰囲気。

田中が屋敷にいた頃に戻ったみたいだ。私はくわっと欠伸した。

「おっしゃ!」

田中が突然歓声をあげたので驚いて振り返る。

「終わったの?」

「ああ」珍しく機嫌が良さそうにニヤニヤ笑いながら、田中はノートパソコンをパタンと閉じた。

「これでようやく年が越せるぞ、燁子」

「昔話に出てくる貧しい老夫婦のような台詞ね」

「やっぱり俺は天才だな」田中は私をぎゅうっと抱きすくめ、髪に顔を埋めた。

珍しく甘えているようだ。

「偉いわ、田中」コシのある髪をサラサラ撫でてやると田中は嬉しそうに目を細めた。

「退屈されていたのでしょう。お相手いたしましょうか?燁子さま」

耳元で囁くので思わずゾクリとする。
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