冷徹執事様はCEO!?
田中は尚も私をソファーに組敷こうとする。

今日はなんだかアグレッシブだ。

胸を押し返して抵抗するが、手首を押さえつけられた。

「随分聞きわけが悪いのね」

「燁子が悪い」田中は拗ねた子どものように不貞腐れて言う。

「はあ?」思わず私は聞き返した。

「男に囲まれて、楽しそうにしてただろう」

田中は、切れ長の目をスッと細めて不愉快そうに私を見つめる。

「全然楽しくなかったわよ。みんなお目当ては私じゃなくて葛城家だもの」

かつての田中がそうであったように。

「田中も、まだ葛城家に未練があるの?」

「…ある」

「そう」だから実力行使で私を手に入れようとしてるのか。

私は真っ直ぐに田中を見据えた。

漆黒の髪、切れ長の瞳に通った鼻筋。私は手を伸ばして形のよい薄い唇に指先で触れた。

ああ、欲しがっているのは田中じゃなくて、私のほうだ。

どんなに将来有望で人徳がある若手よりも、節操無しで意地悪で強引な田中に魅了されてしまう。

「葛城の名が欲しいならあげる。だから側にいて」

家柄が目当てでも構わない。

唯々、田中と一緒にいたいのだ。

あんな身を引き裂かれるような想いはもうしたくない。
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