冷徹執事様はCEO!?
「お兄さま」

その場に似つかわしくない、清純な空気が漂う。

鈴の音のような声の方へ振り向くと制服を着た女学生がリビングの入り口に立っていた。

匠の側まで歩み寄ると「ただいま戻りました」と言って楚々と頭を下げる。

「燁子、今日は遅かったな」

匠はあっと言う間に『兄』顔になる。その代り身の速さには驚嘆だ。

「今日は学校で委員会だったので」

匠は「そうか」なんて偉そうに頷いている。自分は美容部員にお持ち帰りされたくせに。

いかにも処女であろうこの妹はそんな兄の一面なんて知る由もないのだろう。

「友人達にも挨拶して」

「次女の燁子です。今日はごゆっくりしていってください」妹はペコリと頭を下げた。

さらりと長いおさげが肩に落ちる。

顔を上げるとネコのようなアーモンドアイに健康的な赤い唇をした美しい女の子だった。

しかし、見覚えがある。

「あれ?」俺は思わず声を上げる。

「君は、さっきの」妹は幽霊でも見たようにギョッとした表情で俺をみている。

「リョウ知り合いか?」駆が尋ねる。

「うん、ちょっとね」

さっきまで超庶民的な中華屋でラーメンと餃子を美味しそうに食べていた子が、こんな豪邸に住むお譲さんだったとは。

凛とした佇まいだったので気がつかなかった。

しかし、素の彼女は無邪気にニカっと笑っていた方だろう。

思わず笑みが零れる。

妹は真っ赤になると、逃げるようにリビングから出て行った。

あのリアクションはやっぱり可愛い。
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