冷徹執事様はCEO!?
結局、そのあともどうでもいい話ばかりしていて想うように課題は進まなかった。

葛城が夕飯を食べていけ、というのでお言葉に甘えてご馳走になっていく。

妹が姿を現すのを期待したが、結局見かけることはなかった。



葛城家を出るのは9:00を回った頃だった。

停めていたバイクをガレージへ取りに行き帰ろうとしたその時だった。

「あ、あの」

玄関先に妹がいつの間にか立っていて呼びとめられた。

紺色の麻のワンピースに白いカーディガンを羽織り、お下げに結っていた髪を下ろしている。

そのせいか、先ほどよりも大人びた雰囲気だった。

妹はパタパタと小走りで近くまでくる。

「燁子ちゃん?」

妹がこっくりと頷くと艶やかな黒髪がさらりと揺れた。お風呂に入ったのか仄かにシャンプーの香りがする。

「これ」青い封筒を差し出してくる。

中には何が入っているのかと考えると、不覚にも胸が高鳴ってしまった。

「…メルアド?」

「違います!さっきのお金です」妹は真っ赤になって否定する。

なんだ…と、あからさまに落胆した。

しかし、真っ赤になっている表情はやっぱり可愛い。

その細っそりした肩を抱き寄せて、長い髪に顔を埋めたい衝動に駆られる。

そんな事をすれば匠に殺されるだろうけど。
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