冷徹執事様はCEO!?
「何で拒むんだ。このベッドだと、いつもお預けを食らう」稜は不満気だ。

再会してからは大分感情を顔に出すようになってきた。

数ヶ月前までは人形みたいに無表情な顔をして、毎朝起こしに来ていたのが嘘みたいだ。

私はクスリと笑う。

「私と婚約するのは妥協?打算?」

「今更、其れを聞くのか?」稜は横に目を反らす。

「あら、私はまだ何も聞いてないわ。貴方の口からは」

稜は黙り込み言葉を探るように視線を泳がせる。

しばしの沈黙。


「妥協だ」

「っええ?!」まさかの回答に思わず聞き返す。

「本当は男を全く知らない燁子を独占したかった。初心で恥じらう姿が見れなくて残念だ」

稜は私の手を取って、指先にキスをする。その仕草が妙に色っぽくてドキドキしてしまう。

「あら、今だって充分恥じらいはあるわよ」

「下着姿で人を堂々と誘惑しておいてよく言うな」

「な、何のこと?!全然記憶にないんだけど!」私は真っ赤になって否定する。

「赤いランジェリー」

酔っ払って添い寝してもらった夜がフラッシュバックする。

「あ、あああれはそんなんじゃないわよ!生意気な田中をちょっと困らせてやろうと思って…!」焦って思わず苗字で呼んでしまう。

「そんな事されたら、誘っていると思うだろう、普通」

「眉一つ動かさなかったくせによく言うわよ」私は非難がましい視線を向ける。

「あの時は、仕事だったから」

パパと結んだ雇用契約に律儀にも守っていたらしい。仕事は真面目のようだ。
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