冷徹執事様はCEO!?
「燁子様」

田中はニヤリと不敵な笑みを浮かべた。

「詐欺だわ…」

私は眉根をギュッと寄せる。

「でも負けは負けです。遊びとはいえ、葛城の人間が嘘を付くのですか」

田中は鼻っからそのつもりだったんだ。やっぱり相当性格が悪い。

「解ったわよ」

私は苦虫を噛み締めたような顔で言う。

「何すればいいの?シルバーでも磨く?それともトイレ掃除?」

「え…、なんか、そんな感じなんですか?」

「じゃあ、夕飯の支度とか?」

「もっとあるじゃないですか。男と女が2人っきり。目の前にあるのは…?」

「…テレビ?」

「そっちじゃない」田中の長い指が顎に添えられ、くるりと反対側を向かせられる。

「ああ!ベッドね」

「執事と傷心の令嬢。目の前にベッドがあって外は雨。なんだかちょっとエロティックじゃありませんか」

田中は妖艶に微笑み指先でそっと唇をなぞる。

身体の芯がゾクリとした。

シンと静まり返った部屋で、窓に雨粒が叩き付ける音が響く。雨足が強まったようだ。
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