冷徹執事様はCEO!?
私の胸の内も嵐の予感…な訳ない。

「でも私と田中だよ?ガサツな令嬢と性悪執事じゃ、淫靡な小説のようにはいかなくない?」

私と田中がベッドの上で甘い愛を囁き合う姿なんて想像もつかない。

そもそも田中は美しいが故に、あまり男を感んじさせない。

「まあ、確かに燁子様は粗忽者ですしね」

自分の欠点はあくまでスルーするようだ。

「何かイマイチよね」

確かに、と言って田中はあっさり引き下がる。

「では、ご両親に離婚の事をきちんと報告してください」

「はい?」

急な展開に私は眉間に深い皺を寄せて聞き返す。

「葛城家の留守を預かる身として、話さない訳にはいきません。私から話す前に自分の口からきちんとご両親に一切の事情を説明してください」

「ちょ…ちょっと待ってよ。私だって色々混乱してるのに」

私は焦って言い訳がましいことを言ってみる。

「燁子様が傷心でロクに食事も喉を通らないのであれば、落ち着くまで待ちますが、現に驚くほどよく食べ、よく飲み、男の部屋でもぐーすか寝れるほど心身共に健康です」

しかし田中は淡々とした口調で一気にまくし立てて来る。

「まあ…そうだけどさあ」

私はチラリと上目で田中の表情を盗み見る。

微動だにせず無表情だ。

こりゃあマジだ。
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