届かなくても、
扉のしまる音が聞こえると溜めていた涙が零れる。




涙を拭いたくない。





女々しい自分が嫌い、大っ嫌い。





もう諦めようよ。




自分の『心』に問いかける。





返事はない。




ねぇ、私こんな思いしたくないよ。



傷つきたくない。



胸がズキズキする。



どうすればいいの?






いずれも返事はない。







私はフラフラと、どこへ行く訳でもなく





歩いた。




パタン、パタンと上履きのこすれる音。





何も知らない人が見たら私は不審者だ。





でも、あいにくこの校舎には人がいない。






自分のクラスへと辿り着き自分の席へと座った。





太陽が沈み、外は既に真っ暗であった。




黒板には明日の準備物だけ書かれている。





木製の教卓に先生のデスク。




給食の時に使うお盆。




全てがオブジェに見える。





自席には読書の本が3冊入っている。




2冊が借りた本でもう一つは自分の本。





彼から借りた本はない。





最近は借りていないだけ。






私の席に彼の面影はない。





簡単に切れる関係性は


持つ必要なんてなかった。
< 57 / 213 >

この作品をシェア

pagetop