雨音はショパンの調べ
何度も嘘をついたのに、君は一言も 俺を咎めずに頷いて溢れる涙を拭った。


バカな男だな。
別れて気づくなんて……。一番大切なものに


もう一度、あの日に戻れるなら……。

もう一度、あの時に戻れるなら……。

あの言葉を取り消しにして……。

君の指に誕生石の真珠を……


なんて今更、都合良すぎるよな。


ポツリポツリ窓を叩く雨の音が、ピアノの音にリンクする。


君の流した涙の記憶と共に、ショパンの調べが哀しく響く。


タイミングが良すぎるんだよ、全く……。


すっかり冷めた珈琲をブラックのまま啜って、溜め息をつく。



あれから、1年。

今でも鮮明に あの日の君の淋しげな微笑みを思い出す。


まだ携帯のメモリーから、君のアドレスも電話番号も消せずにいるんだ


< 2 / 6 >

この作品をシェア

pagetop