義兄(あに)と悪魔と私
「だから何だよ。過去を知ったって、何も変わらない。壊れる時は壊れるんだ。無駄な詮索をするのはよせ」
明らかに、比呂くんはこの話を避けている。
「珍しいね。ずいぶんムキになるんだ」
「……別に、なってないけど」
比呂くんは否定したけれど、普段は冷たい能面のような顔が、わずかに赤くなった。
いつかそれを隠すかのように、比呂くんは立ち上がり、ベッドの方へ行って座る。
「どうしたの」
「もう勉強なんてやる気ないんだろ? だったら早く脱げよ。いつもみたいに」
(そうやって、話を逸らすんだね)
私は言われた通りに服に手をかけながら、今日の比呂くんはとても分かりやすいと思った。
私といる時はほとんどいつも、何を考えているのか分からない。
何を思って、どんな気持ちで私を抱くのか、何度も考えて苦しくなった。