義兄(あに)と悪魔と私
 
私は無理矢理笑った。
さっきまで、ムカついたからとか、私を犯したのは復讐だったとか、そんなことを平気な顔して言っていたくせに。

(おかしいよ……)

「いいじゃん別に。たまには兄貴っぽいことさせてくれてもさ」

比呂くんも比呂くんで、へらへらと冗談みたいなことを言う。

「私、あなたのこと兄だなんて思ったことないから」
「分かってるけど、そこをなんとかね」
「それは命令?」

私が聞くと、比呂くんは首を振った。

「違うよ。お願いしてんの。大体復讐は終わりなんだから、円はもう奴隷じゃないよ」
「……え?」
「え、じゃなくて。お願い」

それは突然私の心を揺らした。
奴隷解放。私はもう比呂くんの奴隷じゃ、ない?
終わった? 私の悪夢がこんなにあっさりと。
 
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