義兄(あに)と悪魔と私
「あの男、暴力団関係者らしいんだ。良子さんはどうなるんだって話だけど……円まで自分を危険にさらすことはない。だから絶対近づくな」
「うそ……全然そんな風に見えなかったよ」
暴力団といえば、ヤクザ。見た目からしていかにもなイメージがあったが、あの男は普通のどこにでもいるサラリーマンにしか見えなかった。
しかし、平日のこんな時間に母の相手をしているような人間だ。普通の仕事ではないのかもしれない。
「人間見た目じゃないんだよ」
「でも」
あの男は母の不倫を止めさせるには重要な人物だ。
渋る私に、比呂くんが懇願するように言った。
「頼むよ」
比呂くんが私を心配してくれている?
それ自体が、嘘みたいに感じた。
「どうしたの比呂くん。私の心配なんて、変だよ?」