義兄(あに)と悪魔と私
 
夢みたいな言葉。
最期に俺を喜ばせるための、嘘でも嬉しい。

悔しいなぁ。
俺はもう、夢か現実か確かめることもできない。
もう、耳も聞こえなくなった。

だからせめて、泣かないで。笑って、円。
ずっと君の笑顔が見たかった。
君に笑って欲しかった。

やっと叶った。
だけどもう、涙でそれも見えないや。
馬鹿だな。最初から最後まで。

瞼が重い。

さよなら――円。
君への想いは、ここに置いていく。

もう、思い残すことも無くなった。

……なんて、嘘だ。

本当はこんなところで死にたくない。
まだまだやりたいこともある。
やらなきゃいけないことだってある。

死にたくない、君と……
 
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