義兄(あに)と悪魔と私
「わかった! この間のテストヤバかったんでしょー!?」
「な……何故それを……!?」
「わかるよ。だって円、宿題出してなかったじゃん。あれ、やってないと解けないような問題ばっかだったもん」
「そっかぁ、失敗したな……まぁ、単位に関係ないし、次頑張るよ!」
平静を装い、笑い話にする。
麻実に比呂くんとのことを気づかれてはいけない。
けれど、心の中は少しも笑えなかった。
「あの日」の翌日、全く勉強出来ていなかったことに加え、体調が優れなかった私は、テストどころではなかったのだ。
隣でなに食わぬ顔でテストを受ける比呂くんが視界に入る度、私を激しく動揺させた。
あの日の、憤り、恐怖、そして消えたくなるほどの羞恥。
全てがフラッシュバックして、訳がわからなくなる。
ようやく、少し落ち着いてきたのがここ数日だった。