義兄(あに)と悪魔と私
 
私はそうやって母に守られ、なんとか繋いできた命だ。
生活が少し落ち着いてきてからも、あの日のことは片時も忘れたことなどない。

有坂さんとの結婚が決まった時は本当に嬉しくて、やっと母が幸せになれるのだと思った。
だから例え母が有坂さんを裏切っているのだとしても、私は――

間違っているのは分かっている。
比呂くんの気持ちなんて、これっぽっちも考えてなどいない。
彼への憎しみが消える訳ではないが、申し訳ないことをしているとも思ってはいる。

それでも私にとっては、母とこの生活を守ることが何よりも大切だ。

二度と、あんな母は見たくないから。
 
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