義兄(あに)と悪魔と私
 
「あのねぇ、北見さん。払えないじゃなくて、払うんだよ」
「金を作る方法なんていくらでもあるでしょ? 五体満足なんだからさぁ」
「可愛い娘さんを不幸にしてもいいの?」

取り立て屋の脅し文句の数々。
いつも気丈だった母が、震え上がっていた。

「どうか、お願いします。私は何でもしますから、娘だけは」

泣きながら、男に土下座する母の姿が幼心に焼き付いた。

その後、母は必ずお金を払う約束をして事なきを得た――のかは、正直分からない。
しかし少なくとも、私が母に守られたことは確かだった。

おそらく、いわゆる夜の仕事をしていたと思う。
母は一度も言わなかったけれど。
 
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