FOREVER FRIEND
「ところでユリアちゃん、ここまでどうやって来たの?」
「バスですけど‥」
「じゃあ、ちょうどいいや!今日はバス停までミカに送らすからちょっと待ってて」
「えっ、あのそんなの悪いです!」
ルイはユリアの返事を聞かず、そのまま厨房の奥に入って行ってしまった。

あぁ~、また急に緊張してきた。

そしてすぐにルイが厨房から出てきた。

「おまたせ~ミカがOKしてくれたから今日は帰っていいよー。忘れずにちゃんと親御さんの許可もらって来てね」
「はい、分かりました。あの、大友さんは何処にいるんですか?」
「あっ、ミカなら外で待ってると思うよ」
「えっ、じゃあ。今日は失礼します!」
ユリアは急いで外に向かった。

「は~い、気をつけてね」
ユリアが急いで外に出ると入り口の前のガードレールにもたれて待っているミカがいた。

「あの、送ってもらってすいませんでした!!」
ユリアはミカに駆け寄り深く頭を下げた。

「えっ、まだ送ってないんですけど‥」
「あれ!?そっか。じゃあ、送り迎え宜しくお願いします」
「フフッ、テンパりすぎ。しかも送り迎えって‥‥送るだけだし」
ミカが笑いながら言った。

「えっ、あっ、何か色々すいません‥‥」
「まぁ、そんなに気使わなくていいよ。買い出しに行くついでだし」
「そうなんですか?でも、本当ありがとうございます」
「フッ、分かったからじゃあ、行こうか」
「はい」
ミカが歩きだした。
ユリアはまた、前と同じようにミカの後をついて歩いた。

私のバカ!!テンパりすぎちゃって自分が何言ってるのかも分かんない。
でも、まぁ大友さんが笑ってくれたからいっかな。さぁ、せっかくのチャンス。何を話そうかな?大友さんが答えてくれそうな話しでないと‥‥う~ん悩む‥。

‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。
‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥。

‥‥‥あっ!?思いついた!
ユリアは思い切ってミカに話しかけてみた。

「あの~、大友さん」
「ん?」
「ルイさんって凄く綺麗な人ですよね?」
「えっ、アイツが?」
「はい」
「それ、本人に言ったら絶対喜ぶよ!っていうか絶対、調子に乗ると思うけど‥‥」
ミカが少し笑いながら言った。

「身長が凄く高いからモデルとかやってるんですか?」
「モデルって‥‥マジで言ってんの?」
また、ミカが笑いながら答える。

「はい‥‥違うんですか?スタイル良くて、あんなに身長があればモデルしててもおかしくないですよねぇ?」
「まぁ、スタイルは別として、身長が高いのは‥‥」
ミカが何か言いかけてやめた。

「‥‥‥‥‥‥‥‥‥‥」
「‥‥‥‥‥‥‥‥‥?」
「あの~、身長が高いのは‥‥何ですか?」
「もしかして、気づいてないの?」
「えっ?何をですか?」
「アイツ、男だよ」
「えっ!?えぇーーー!!!」
ユリアはビックリしてその場に立ち止まってしまった。

「そんなにビックリしなくても」
「冗談ですよね?」
「そんなしょうもない嘘つかないよ。嘘と思うなら本人に聞いてみたらいいよ」
「私、ルイさんが男の人なんて!?そんな事、全く気付かなかったです。それなら尚更、綺麗ですよね?」
「私はそういう風に思った事ないから分からないかな...後、付き合いが長いから何とも思わないし」
「そうですか‥‥」

ユリアはもしかして、自分は聞いてはダメな事を聞いてしまったのではないかと一瞬思った。その理由は‥‥テレビとかではよく見たり聞いた事があるが自分が実際、本物のトランスジェンダーの人に会うなんて思っても見なかったからだ。でも、それはルイの事を“軽蔑したり”“偏見を持つ”などではなかった。

むしろその逆だった。

本来、男性であるルイが、言われるまで分からないぐらい普通の女性に見え、綺麗な事が羨ましく思えたからだ。




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