君影草~夜香花閑話~
「……」
真砂は左腕に目を落とした。
ここまでの怪我をしてまで助けようと思ったのは、深成だったからなのか。
もしあのとき一緒にいたのが、あきや千代だったら、どうしただろう。
「深成は、里から出るときに、随分泣いたそうですな」
「……ああ、聞いた」
深成は真砂の前では泣かなかった。
が、捨吉が送って行ったときに泣いたそうだ。
「深成は、頭領を慕っておったのですなぁ。許されるなら、ずっと頭領のお傍にいたかったのでは、と思いますよ」
「帰ると決めたのは、あいつだぜ。大体、俺の傍にいて、あいつに何の得があるというのだ」
「人を愛する、ということは、損得抜きの話でありますれば」
ふふふ、と笑いながら、長老は囲炉裏の灰をかき混ぜる。
そして、真砂に顔を向けた。
「頭領だって、深成がいなくなってから、何か虚無感を感じませぬか?」
少し真砂は首を傾げた。
「虚無感……というのか。まぁ、ちょっと不便を感じることはあるが」
だがそれは、深成がいなくなったためというよりは、片腕になったことが原因なのではないかと思うのだ。
真砂は左腕に目を落とした。
ここまでの怪我をしてまで助けようと思ったのは、深成だったからなのか。
もしあのとき一緒にいたのが、あきや千代だったら、どうしただろう。
「深成は、里から出るときに、随分泣いたそうですな」
「……ああ、聞いた」
深成は真砂の前では泣かなかった。
が、捨吉が送って行ったときに泣いたそうだ。
「深成は、頭領を慕っておったのですなぁ。許されるなら、ずっと頭領のお傍にいたかったのでは、と思いますよ」
「帰ると決めたのは、あいつだぜ。大体、俺の傍にいて、あいつに何の得があるというのだ」
「人を愛する、ということは、損得抜きの話でありますれば」
ふふふ、と笑いながら、長老は囲炉裏の灰をかき混ぜる。
そして、真砂に顔を向けた。
「頭領だって、深成がいなくなってから、何か虚無感を感じませぬか?」
少し真砂は首を傾げた。
「虚無感……というのか。まぁ、ちょっと不便を感じることはあるが」
だがそれは、深成がいなくなったためというよりは、片腕になったことが原因なのではないかと思うのだ。