君影草~夜香花閑話~
 片腕になってから、確かに深成がいろいろ世話を焼いていたが、それは本当にちょっとの間だ。
 真砂が片腕を失ってから程なく、深成はここから去ってしまった。

 怪我をする前は、別に深成の世話など受けなかったし、となると今感じる不便さは、やはり片腕になったためとしか思えない。

「頭領が怪我をした直後、ずっと深成がお世話をしておりましたな。我らと合流するまで、ずっと深成が傍にあり、怪我の手当てや食事の世話までしていたのでしょう?」

 清五郎から聞いたのだろう。
 長老は真砂の袖に隠れた左腕に目を当てた。

「それを、あなた様が許しただけでも、深成を特別に思っていたとわかるではありませんか」

「……あんな状況だったら、仕方なくないか……?」

 若干自信なさげに、真砂が言う。
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